Everybody's Talking About George Harrison !!

先頃ジョージ・ハリスンのベストアルバム「Let It Roll」が発売されました(祝)。オリビア未亡人の選曲ということですが、なかなか意表を突いたというか、意図がわからないというか、とにかくファンであればある程「何か言わずにはおれない心」を誘う選曲らしく、音楽雑誌なんかでも色々な人が色々な事を表明しています。「ロッキング・オン」では松村雄策氏が御意見番らしく積年の想いがこもった「ファン汁」を放出してますし、「レコード・コレクターズ」ではすかさず本秀康氏の「レコスケくん」が登場してユニークすぎる涙を流してます。とまれ、ジョージ・ファンにとっては遺作を鑑賞する以外にアクティビティに乏しいというのが近況で、不平を言う事であっても嬉しいイベントには違いないのでしょう。少なくてもファンの一人である私はそう感じています。

ということで年甲斐もなく便乗します。といっても、アルバムについてではなく、「マイナー扱いされているけど、俺、この曲大好きなんだよ!」的な極私フェイバリット5曲についてです。ジョージ・ファン以外には(ファンであっても?)退屈な駄文なので放置でヨロ。

1. 「You」
不遇期のアルバム「Extra Texture」の、トップナンバーにして'75年のシングルヒット曲。なので別にマイナーな訳でもないんですが、この曲が特別好き、という人に何故かお目にかかったことが無いです。けど自分にとっては不動のベスト・ワン・オブ・ジョージですよ。勿論上記ベスト盤には未収録。この時期のジョージは喉を痛めていたと思うのですが、にも関わらず異常にケロケロ高い声は、ビートルズ時代によくやったみたいに再生速度を上げてミックスしたのかな? シンプルな2パートからなっていて終始リフで押し通してしまう、曲想的にはアイディアの枯渇とも思えなくもないこの曲が、どうしてこれ程までに心に響いてくるのか自分でも分かりません。この曲とジョンの「Whatever Get You Thru The Night (真夜中を突っ走れ)」、ポールの「Listen to What the Man Said (あの娘におせっかい)」を聴く度に、リアルタイムで聴いていた頃の中学生の夏を思い出します。蚊取り線香でむせ返る暑苦しい子供部屋と、低く流れる深夜ラジオ。別に夏に集中して流れてた訳じゃないと思うんですが、夏の記憶だけが突出して匂い付きで甦るのが面白いです。
2. 「Awaiting On You All」
これも名盤の誉高い「All Things Must Pass」の Disc 1 収録なので、マイナーではないですね。けど、ひょっとしたら「My Sweet Lord」より好きかも、なアルバム中のマイベストです。このアルバムはフィル・スペクターのプロデュースで、ウォール・オブ・サウンドで... というよくある説明には、いまいちピンとこない所もあるんですが、このナンバーの分厚いブラスとコーラスにはまさに「ウォール・オブ・サウンド」。深いリバーブに包まれてガツンと始まり、スネアのバシッで終わるまで、心拍数が上がりっ放しの高揚感。なのに上記ベスト盤には未収録...
3. 「Dream Away」
'81年の映画「Time Bandits (バンデットQ)」の主題歌。この映画、いきさつは忘れたけど劇場で観ました。エンドロールでこの曲が流れたときはジョージの曲なんて知らず、後で知った訳ですが、本当に非の打ち所の無い傑作ポップだと思いますよ。なんで大ヒットしないかなぁ... アルバムでは無視度ナンバーワンな「Gone Troppo」の1曲で、当然のように上記ベスト盤未収録。
4. 「Woman Don't You Cry For Me」
地味だけど質実剛健なアルバム(だと思ってます)「33 1/3」のトップナンバー。見過ごされがちなジョージのファンキーな一面が良いかたちで結実しています。実はこのアルバムを聴いたのは30歳を過ぎてからなので、エラそうにプッシュできませんが、ティーンの時に聴いてたら特に心にひっかからなかっただろうなー、という、そんな曲です。上記ベスト盤(ry
5. 「Old Brown Shoe」
最後はビートルズ時代のジョージ。「Something」や「While My Guitar...」、勿論好きです。でも、この曲を忘れちゃいけませんよ、旦那。初期の頃はチェット・アトキンス指向のカントリー風ギターを弾いてて、中後期にはインド音楽に接近... というパブリックイメージに隠れがちな、黒人音楽に培われたロックンローラーとしてごくあたりまえの資質が、このナンバーで再確認できます。定説どおり唸りまくるポールのベースと、一人前のギタリストに成長したジョージのリードギターがウマー。特に、バンドをやってる人にアピールするナンバーではないでしょうか。